『賢者の食卓』  まずは笹茶。  瑞々しい葉を丁寧に布で拭き取り、しかし産毛を損ねないように。  銀のハサミで葉を刻み、白陶の壷で念入りに火を通す。白い煙が立ち昇って香りが出始めたら、朝露を集めた水を差して軽く煮立てる。産毛は気にしない。  笹の甘味が出始める頃合を見計らって笹葉を除き、器に注ぐ。それで出来上がり。 『つまるところ貧乏性でありますな』  余計な一言を口にしたカエル執事を踏み潰し、賢者は笹茶を朝飯代わりに飲み干した。